防音工事後のモニタースピーカー伝送特性について
左図は、某スタジオのエンジニア席におけるモニター・スーカーの伝送特性である。壁マウント形式で固定されたGENELEC 1032Aの位置決めはエンジニア氏も立ち会いの下、かなり綿密に行った。低音特性は素直に伸びていて、スケールの大きなモニター音になったのは狙い通りである。一見、バッフル・マウントのように見えるが、スピーカーを固定している骨組以外はすべて吸音面だ。また、吸音配置パターンとしては、原則として下記を推奨している。
①スピーカー正面壁面は吸音面にする。
②必要に応じて一部吸音面にする場合があるが、後壁、両側面壁は反射性にする。
その結果、本例の平均吸音率は0.25弱である(下図)。
従来の常識からするとライブと思われそうだが、そのような感じでは全くなく音像の大きさ、定位、奥行感、解像度などは何ら問題ないレベルと評価していただいている。むしろ張りのある自然で明快な鳴り方は、ストレス感のない楽なモニターができるとのことだ。このことを伝送特性との関連で表現するならば、最大ポイントは定在波の分散均一化の音場、すなわち、①200Hz以下におけるピーク音圧がないということ(周辺レベルから5~6dB以上突出しない)、②大きな幅をもったディップがない、といった伝送特性の現実にある。
中高音はスピーカーの性能および設置条件によって決まり、低音はその条件に加えて、さらに部屋の共振特性が重畳された音を聴く…というのが実態である。中高音は工夫による音質調整が可能な世界だが、低音の制御の困難さはよく知られるところだ。"スタジオの数だけ異なるモニター音がる"と言われる大きな原因の一つと思われる。本スタジオの伝送周波数特性は、やや右肩上がりであるが、全体的に平準で低音域の大きな凸凹がない。このような特性が、中高音はもとより低音まで音の動きを把握でき、その上、スケール感も再現できていることにつながていると言える。
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