コンパクトSTUDIOに求められる防音工事の性能
今回紹介されているような壁式鉄筋コンクリート造のマンションや近年建設されている鉄筋コンクリート造のマンションは、一般に築年数の古いマンションに比べ、住戸間の界壁界床の遮音性能が高い。これは住戸におけるサッシの気密性能が高くなり住戸内の暗騒音が低くなることによって、より住戸間の騒音が意識された結果、界壁界床の遮音性能を高くすることを要求されたことによるものだ。
そうした隣戸に対して高い遮音性能を有する近年のマンションにおいては、決して大音量でないYAMAHA NA-10Mやそのほかのニア・フィールド・スピーカーによるモニタリング環境として、どの程度の防音工事が必要になるか判断に悩んでいる人も少なくない。このことに関して数値的に検証してみる。
NS-10Mクラスのモニター音量としては80dBから90dBくらいが一般的といえるだろう。これに対して住宅街にある近年の気密性の高いマンションでは、夜間などの静かな時間帯での暗騒音が25dBくらいになるケースもある。このことから考えると少なくとも65dB以上の遮音量が必要になり、D値で言えばD’-65以上の性能が必要ということになる。
一方、壁厚あるいはスラブ厚200mm以上の最近の鉄筋コンクリート造のマンションの住戸間の遮音性能はD’-50~55程度であり、ピーク時で90dBくらいのモニター音量になると、25dBの暗騒音を10dB以上も上回ってしまうことが分かる。これは、近隣住戸においてモニター音が騒音だと認識されるレベルである。
そこで、D’-65以上という性能を得るには、完全なフローティング構造(浮構造)を採らない限り難しい。
某スタジオを例に挙げると、D’-79という高い遮音性能が得られており、実際には100dB近い音量も出すことが可能であると考えられる。
(左図:青い部分が一般的な鉄筋コンクリート造のマンション、オレンジがフローティング構造(浮き構造)の施工を施した場合の遮音性能。某スタジオの遮音性能は赤い棒グラフで示された部分で、直上階に対しD'-79を確保している)
某スタジオを例に挙げると、D’-79という高い遮音性能が得られており、実際には100dB近い音量も出すことが可能であると考えられる。
(左図:青い部分が一般的な鉄筋コンクリート造のマンション、オレンジがフローティング構造(浮き構造)の施工を施した場合の遮音性能。某スタジオの遮音性能は赤い棒グラフで示された部分で、直上階に対しD'-79を確保している)
なお、最近のパワードスピーカーに関しては低音域の音量が高いので遮音性能に関しては余裕を持った設計とすべきだろう。
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