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2013年8月 1日 (木)

アコースティックオーディオフォーラム 村井氏からのコメント

7月28日に弊社の防音工事を体験できるショールームで開催されたアコースティックオーディオフォーラム  第一回。当日、コメンテーターとしてお招きした村井裕弥様からレポートをいただきましたので、ご紹介させていただきます。
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 アコースティックエンジニアリングのサイトを見ると、すでにレポートが2本もアップされている。講師自身によるレポートはもう不要なのではと思ったが、二番煎じは承知の上で、あの日何を伝えたかったかを書きとめておく。
 
 Acoustic Audio Forumの講師を依頼されたとき、筆者が希望したのは「スフォルツァートDSP-03のお披露目会ならやりたい」このひとことだけだった。別に、このメーカーと深いつながりがあるわけではない。代表・小俣恭一氏とは、どこかのイベントで名刺交換をしただけの関係。しかし、スフォルツァートのネットワークプレーヤーが優秀であることは十分理解していたし、世界初のDSDファイル対応のネットワークプレーヤーがどのような出来であるかはいち早く知りたかった。そして何より、「DSDファイルのネイティヴ再生こそがオーディオ界のあすを救える」と常日頃感じているからこそ、このForumをきっかけのひとつにして、少しでもDSDファイルの素晴らしさを広めたいと考えたのだ。
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 話は90年ほど前にさかのぼる。当時先進国はラジオ・ブームで、受信機は大人気。そのあおりを受けたのは蓄音機。要するに「ただで聞ける方がいいに決まっているじゃないか」という話だ。
 そこでレコード業界の人たちは知恵を絞った。「ただで聞けるラジオに対抗するためには、音質で圧倒するしかない」
 SP盤は機械吹き込み(電気を使わない録音方式)から、電気吹き込みへと大転換を図り、音質改善に成功。まあこのあたりをくわしく語り出すと、いろいろ問題点もあるのだが、とりあえずそうだったということにしておく。
 かくして、レコード業界は、ラジオに圧倒的な差を付け、隆盛期を迎える。現在このラジオにあたる存在がインターネットであることは言うまでもない。インターネットさえあれば、とりあえずかなりの音楽をただで聴くことができるのだ。
もちろん筆者もインターネットは利用する。動画サイトをよく見るし、無料試聴も活用する。しかし、それだけでは生きていけない。それは、ファストフードとレトルト食品だけで生きていくのはつらいというのにどこか似ている。
 だから、90年前のように、「圧倒的な音質でインターネットに差を付けるのが一番なのでは」と考えている。とにかく、多くの人々に「DSDならではのもっとおいしい音」を体験していただくのだ。そうすれば、DSDファイルを愛好する人たちが増え、大きな流れができるはず。またそうすることで、オーディオ界のあすも開ける。優秀なDSDファイルも配信され続ける。そうなってほしいと、心から願っている。
 筆者宅では、11年の暮れからDSDファイルのネイティヴ再生が可能になった。もちろんそれは、いわゆるPCオーディオによる再生で、再生時パソコンの電源はONのまま。筆者は様々なノイズ対策を施しているので、実用上何の問題もないのだが、このノイズを毛嫌いしてPCオーディオの世界に飛び込んでこない方はかなりの数いらっしゃる。
 あと、よく出会うのが「パソコンを、リスニングルームに置くこと自体が許せない」という方。これは「デザイン的に許せない」という方と「雰囲気が研究室のようになってしまい、音楽にひたれなくなる」という方が半々くらいだろうか。
 こういったハードルを克服するには、やはりDSDファイル対応のネットワークプレーヤーが欠かせない。ネットワークプレーヤーなら、再生中パソコンの電源はOFFにできる。また、外見も間違いなくオーディオ機器だから「外見上パソコンを毛嫌いする方たち」も、抵抗なく部屋に招き入れることができるだろう。スフォルツァートDSP-03は、筆者のようにDSDファイルの普及を願うものにとっては、正に救いの神なのだ。
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 筆者は、ミュージックバードというデジタル・ラジオで「これだ!オーディオ術」というオーディオ番組を持っていて、そこで、
○ CDの音
○ まったく同じ演奏を収録したSACDの音
○ 上記SACDとまったく同じ内容のDSDファイル(ダウンロード購入したもの)
といった聴き比べを何度かおこなってきた(この違いが、ラジオを通してでもわかるというのが愉快ではないか)。本当は7月28日もそれをやるべきだったのかもしれないが、同じことをくり返すのも芸がないと感じ、当日は、
○ DSD2.8メガの音
○ DSD2.8メガを元にダウンコンバートした96kHzサンプリング24bitの音
○ DSD2.8メガを元にダウンコンバートしたCDフォーマットの音
の聴き比べをおこなった。またこれとは逆に、
○ CDフォーマットの音
○ CDフォーマットの音を元にアップコンバートした96kHzサンプリング24bitの音
○ CDフォーマットの音を元にアップコンバートしたDSD2.8メガの音
○ CDフォーマットの音を元にアップコンバートした5.6メガの音
も用意し、聴き比べた。「私たちがいかに貧しい音(元は悪くないのに、わざわざ悪くした音)を聴かされているか」また「CDフォーマットから作ったいわゆる『なんちゃってSACD』にもそれなりの値打ちはあること」は、十分理解していただいたと感じている。
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KORGフリー DSD変換ソフト 「AUDIO GATE 」
ちなみに後者について最初に提唱したのは、今井商事代表・今井哲哉氏と思われるが、彼は「CDフォーマットによって切り捨てられてしまった情報は、完全には消滅していないのではないか。それはどこか聞こえにくいところに隠れていて、DSDにアップコンバートすることによって、7割方戻ってくる」と述べている。
 筆者はこれまで、何十枚かのCDを「なんちゃってDSD」化してきたが、今井氏が述べるように「7割方戻ってくるCD」がある一方、「全然戻ってこないCD」もある。その違いがどこにあるのかはまだ不明だ。
 Forum当日は、「DSDファイルが収められているにもかかわらず、SACDがなぜCDを駆逐できなかったのか」という話もした。筆者は基本的にはSACD支持派だが、不支持派のお気持ちもよくわかる気でいる。そのあたりの微妙なズレについてもていねいに解説させていただいた。
 後半はもっぱら選曲を小俣氏にゆだね、ひたすらDSDファイルの魅力に耽溺。昨年暮れ、渋谷ヒカリエでおこなわれたRie fuミニ・ライヴの録音は筆者が用意したものだが、「DSDで録れば、これだけ伝わる」ということは、多くの方に共感していただけたと感じている。
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 もちろんこの日おこなった2回のForumだけで、世の流れが変わるわけはない。先日まったくの別件で地方取材をおこなったが、そこで会った方全員が、DSDはもちろん、いわゆるハイレゾの存在自体ご存じないのにはショックを受けた。しかし、ただ落ち込んでいても無意味だから、今後も地道に広報活動を続けていきたい。スフォルツァートのネットワークプレーヤーとDSDファイルの魅力をひとりでも多くの方に知っていただく。これは筆者にとって天命のようなものだから。

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